平地では葉桜となる頃、中国山地にある小さな村「川角集落」に花桃が咲きそろいました。桃の花といえば甲府盆地が有名で、富士山を背景にした雄大な景色と桃の花は絶景です。ここ邑南町川角集落は標高約400メートルの急峻な谷あいにあります。車がやっとすれ違いができる程の細い山道を登り、棚田が広がる小さな集落で、交通はバスが週に2便、全戸数僅か７戸、平均年齢は80歳を超えるという方々が暮らす限界集落です。
　「このままでは集落がなくなってしまう。自分たちが門戸を開かなければ」と平成18年、当時集落区長の日高忠正さんらが中心となり、耕作放棄されていた棚田に、花桃の植樹をはじめられたそうです。今年で5回を数える「花桃まつり」は、期間中5千人の観光客を想定していらっしゃいます。昨年はイベントの当日だけで、約1500名がお越しになり、乗用車での乗り入れが多いため、各戸の庭などを駐車場に充て、さらに路肩にも駐車する車が並び、渋滞も見られた程の盛況ぶりでした。
　一昨年より弊社お客様の㈱コダマサイエンス様がこの集落のためにと応援されたことや、同社及び弊社が報道機関に取材のお願いをしたところ、新聞各紙、テレビ局は4局が取材に来られ、各紙の記事で紹介され、テレビのニュースで放送されたこともあって、訪れる方が急増したようです。
　鳥取・島根県下にはこのような限界集落がたくさんあり、高齢化や耕作放棄・インフラの整備などの課題に直面しています。マスコミやネットを介して、雲の上にポッカリと浮かび上がる写真が、世界遺産マチュピチュの日本版として話題となり、人々が押しかける竹田城周辺。またお城と雲海の撮影場所としての人気から備中高梁の松山城が注目を集めるなど、観光客が増加した地域もあります。
　邑南町川角集落では観光客として訪れた方が気に入って、草刈などのボランティア活動に係わられ、放棄された古民家を再生し宿泊ができるようにと活動される方が生まれました。
　10年後集落の存続に不安を感じる一方で、花桃まつりをきっかけに、地域と縁の無かった人たちも参加される姿を見て、花桃まつりが続いてゆく一光を感じました。（や）